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【実験やったりました】グリニャール試薬の調製 (Grignard reagent)【祝月間1万PV達成】

 こんにちは、伊予柑です。

 

この度、ドラッグストアでポテチ売るブログが月間1万PVを達成いたしました。

 

嬉しいですね、伊予柑歓喜しております。感無量であります。

 

ということで、今までは研究や化学に関する記事は書いてなかったのですが、今回は少し経路、じゃなくて毛色の違う記事を執筆いたします。

 

合成化学は実験が

 

その名も「実験やったりました」シリーズ。

 

最近の論文はサポートの実験項が充実しているものが多くなってきたとはいえ、それでもやはり実際にやったという話は役立つと確信しています。

 

化学のマンモスウェブサイト、chemstationには一般的な反応と実験手順なんかも載ってたりしますが、僕のブログでは一般的なものではなくて、コイツ!この化合物のコレ!やったりましたわ!!っていう超限定的な実験の話を書きますので、実際にやって上手くいった実験や環境、失敗なんかも共有出来たら良いなと思います。

 

www.chem-station.com

 

第一回は有機化学ではおなじみのグリニャール試薬の調製です。

 

グリニャール試薬。

 

大学の有機化学の授業で必ず習う基本中の基本の反応です。SN2反応という反応機構とセットで習うことも多いかと思います。

 

僕が学部の時に教授がグリニャール試薬が上手にできるヤツは実験のセンスがあるとか、反応を暴走させて三方コックを吹っ飛ばして天井に穴を開けるヤツが必ずいるとも言ってました(昔はグリニャールなどの塩基性の反応であってもドラフトではなくオープンの実験台でやっていました、恐ろしや)。確かに研究室の天井にはちらほら穴が空いていましたとさ。

 

まぁそういう反応なので、研究で自前でグリニャール試薬を調製しないといけないとなるとちょっと身構えたくなるよーな反応ですね。

 

その中でも4-bromo-1-buteneから調製するアルキルグリニャールを最近研究で利用する機会があって、失敗もあったけど上手くできるようになったのでその詳細を書きます。

 

f:id:TBUKUUOx:20190128000619p:plain

 

 実は大学、大学院とあまりグリニャール試薬の調製をした事なかった伊予柑(Hayashi-Jørgensen触媒のフェニル基、アリール基の導入で6年前にやった程度)ですが、最近オックスフォードで市販の3-butenylmagunesium bromideが高いな(100 mlで£247、日本円で約3.5万円)と思い、いやまぁコレくらい買えない事はないんですが、プロジェクト上天然物合成の最初の方で使用するし将来的にグリニャールぐらいスパッと出来る様になりたいしという事で、4-bromo-1-buteneから金属マグネシウムヨウ素で調製する事にしました。(昔、有機の授業でIUPAC名で4-bromobut-1-ene、みたいに習った様な記憶が微かにあるんですけど、どうでしたっけ?)

 

3-Butenylmagnesium bromide solution 0.5 M in THF | Sigma-Aldrich

 

 

それでは実験に行ってみよー。

 

実験

【試薬】

① 3-bromo-1-butene: 12 mmol (1 equiv) = 1.22 mL

② magunesium turnings: 13.2 mmol (1.1 equiv) = 317 mg

③ Iodine: cat. = 4.5 mg (Mgの重さに対して70分の1、だったけど粒によって重さがまちまち、ちょっと多くても大丈夫 )

dry THF: 0.6 M = 20 mL (acrosealってTHFで穴空きまくるよね。なんか対策あれば教えてください。大きな穴が空いてるのは使わない様にしましょう。)

 

【手順】

1、3口ナスフラスコを85ºCのオーブンでしっかり乾燥(30分)(ヒートガン乾燥はしなくて十分。)

 

2、フラスコをオーブンから取り出して攪拌子を入れ、中に窒素(またはアルゴン)を吹き付けてセプタムをして室温まで冷却。

 

3、マグネシウムヨウ素カップボードで計量し、薬包紙で3口フラスコの中に入れる。

 

4、フラスコの中に窒素(またはアルゴン)を吹き付けてセプタム(セプタムを二つ開けて窒素をきちんとフローすると良い)。

 

5、フラスコの底にヒートガンを軽く当ててヨウ素が熱で昇華(フラスコ全体がピンク色になる)すると、ヒートガンから離して中身を混ぜる様にフラスコを回す(硫マグ乾燥みたいな感覚)。コツ:ヒートガンは遠めからゆっくり近づけて行くと良い。

 

6、10分間、マグネシウムを昇華したヨウ素中で激しく攪拌する。

 

7、10分経過した後でフラスコの底に手を当てて室温に戻っているのを確認したら、フラスコのトップをアルゴンラインに接続してゆっくりアルゴンフローしながらTHF(20 mL)をシリンジで入れる。この時、溶液は未反応のヨウ素が溶けて黄色になる。

 

8、よく攪拌しているMg/THF溶液にシリンジで0.22 mL の3-bromo-1-buteneをゆっくり入れる。この時、溶液は色が消えて透明に変わる。3-bromo-1-buteneは全量でないことに注意。

 

9、フラスコを一秒くらいソニケーターにかける。(スターラーの攪拌を止めてから取り外すと攪拌子が暴れなくて済む)

 

10、再び攪拌を開始し、冷水バス(氷いらない)でフラスコを冷やしながら、残りの3-bromo-1-buteneを20分かけてゆっくり滴下。(20分くらいだとシリンジポンプのセットが面倒なので手で加えてしまうのは伊予柑だけでしょうか。)

 

11、滴下が終わると冷水バスをとって室温へ。

 

12、30分間室温で攪拌、ダークグレーの透明な液体になれば完成

 

 

。。。と思ってませんか?

 

甘いですねぇ。オスラジンくらい甘いですよ。

 

 

 調整したグリニャール試薬の濃度を確認

【試薬】

① (–)-menthol: 2 mmol = 312 mg (大きな塊だったから砕いてなんとか<330 mg測りとった)

② 1,10-phenanthroline: cat. = 4 mg 

③ dry THF: 15 mL

 

【手順】

1、グリニャール調整と同様にオーブンで乾燥した1口フラスコに攪拌子と(–)-mentholと1,10-phenanthrolineを加える。(phenanthrolineは本当に少量だからメントールの先に加えるときちんと入った事が確認できる)

 

2、フラスコにセプタムをして、窒素バルーンを刺してdry THF(15 mL)をシリンジで加える。

 

3、メントールがきちんと溶解(透明な溶液になる)するまで攪拌。

 

4、シリンジで調整したグリニャール試薬を(5 mL)測りとってゆっくり滴下する。

 

5、だいたい0.5 Mのグリニャール試薬が調整できているので4 mL加えた段階でピンク色に着色する(薄くても色が消えない程度、僕が調整した時は0.45 Mと少し薄めでした)。

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(写真、左が調整したグリニャール試薬、右は濃度を確認したフラスコ※5mL吸って余ったグリニャール試薬を全部加えたのですごいピンクだけど、実際に滴定終了時(4 mL滴下時)はもっと薄いので注意

 

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(もう一枚滴定の写真。コレくらいピンクであれば十分)

 

 

【結果】

調整したグリニャール試薬を使用して収率90%で目的物が得られました。

 

 

【参考文献】

グリニャール試薬の調整

P. Jakubec, A. Hawkins, W. Felzmann, and D. J. Dixon, J. Am. Chem. Soc. 2012, 134, 17482–17485

 

グリニャール試薬の滴定

Watson, S. C.; Eastham, J. F. J. Organomet. Chem. 1967, 9, 165-167.

 

 

失敗裏話

 いやー、コレ簡単でかつ綺麗にグリニャール試薬が調整できる方法で感動してたんすけどね、一回失敗しました。

 

市販のグリニャールって1Mとかで売ってるでしょ、溶媒多いのは好きじゃなかったのでグリニャール調整に使うTHFを1.5Mでやったら出来たグリニャールが溶けきらず大量の沈殿が発生し、シリンジで測り取ろうにも一番太い針でも詰まって詰まってそれどころではありませんでした。泣く泣くTHFを追加で加えたらなんとか溶けて使えるようになりましたが、もう一回滴定しなければならず結局、反応に使いたい量に足りなくなってショボーンてなりながらグリニャールと反応させる原料を減らすことになりました。グリニャールの濃度は濃すぎると溶けきらないので注意が必要ですね!

 

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(大量に白い沈殿が発生したグリニャール、とほほ)

 

まとめ

アルキルグリニャール試薬がとっても簡単に調整できた。収率をよくする為にも滴定はきちんと行おう。使用したい量の3倍量くらいのグリニャール試薬を調整すると確実。実験項にある濃度はきちんと守ろう。

 

 

〇〇やったりました、の語尾は同窓会であったおでん屋の友達がfacebookでよく使っているのでツボってパクらさせて頂きました。

 

 

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